Q:強迫性障害はどんな病気ですか?
A:現在は強迫性障害とも呼ばれています。不合理とわかっている考えやイメージ(強迫観念)が自身の意思に反して繰り返し浮かび、不安、恐怖を引き起こす。さらに不安、恐怖を和らげるための行為である強迫行為を繰り返し行なってしまう障害です。強迫症状が引き起こされる状況を回避したりすることよって社会生活を障害します。
Q:強迫性障害ではどのような症状がみられますか?
A:@汚れたものに触れてしまい、その汚染が接触によって広がっていくという考えが生じて不安となり、その不安を打ち消そうと繰り返し手を洗ったり、何時間も入浴したりします。
A:A戸締りや火の元が確実にできていないのではという考えが生じて不安となり、その不安を打ち消そうと繰り返し何度も戸締り、火の元を確認したりします。
A:B不謹慎な性的あるいは攻撃的行為についての考えや空想が繰り返し浮かぶというものです。表面的には強迫行為は見られないものの、実際は頭の中で何度もお祈りやおまじないをするなどの打ち消す操作を行なっていることが多いです。
A:C対称性、順番などの正確さに関する強迫観念で、対称性、順番、数などにこだわり、並べ替えたり、やり直したりなどで時間を浪費するというものです。
Q:症状が社会生活におよぼす影響はどのようなものがありますか?
A:強迫症状による時間の浪費や強迫症状を回避することにより、対人技能や職業能力が低下し、人間関係を保てなくなります。その結果、自信と社会的能力を低下させます。
Q:どのような人がなりやすいと考えられていますか?
A:以前は、完全主義、秩序を重んじる、仕事熱心、頑固などの強迫性人格障害などとの関連が指摘されてきましたが、現在は否定されています。脳の機能性の障害と考えるべき疾患です。
Q:発病するきっかけとしてはどのようなものがありますか?
A:強迫性障害の多くは突然発症します。しかしながら、多くの患者さんがストレスとなる出来事の後に発症すると考えられています。女性の場合は、結婚、妊娠、出産、子育てなどによるものに注意が必要です。
Q:原因としてはどのようなことが考えられていますか?
A:原因としてはセロトニンという神経伝達物質の調節障害という考えが有力ですが、ドパミンをはじめとする他の神経伝達物質の関与も考えられています。
Q:どの位の人が発病するのでしょうか?
A:約2%〜3%との人が、一生のどこかの時点で強迫性障害になるのではないかと考えられています。20歳前後で発症することが多く、男性は20歳より前に、女性は20歳より後に発症することが多い傾向にあります。発症頻度については、男女差がないとされています。
Q:強迫性障害を疑ったらどうしたらよいのですか?
A:強迫行為に一日一時間以上を費やすようになり現実の生活ペースに影響してきたら、早期に心療内科・精神科を受診するのが良いと思います。
Q:家族や周囲が気づいた場合はどうしたらよいのですか?
A:まずは患者様の苦悩に関心をもって聞いてあげ、苦悩に理解としめし、勇気づけてあげる必要があります。その上で、早期に心療内科・精神科の受診をすすめるのがよいと思います。患者様から確認など強迫行為に協力をもとめられることもありますが、かえって症状の悪化につながるため、その旨を説明して協力しないようにしてください。
Q:強迫性障害にはどのような治療がありますか?
A:強迫性障害の治療の中心は、薬物療法と行動療法です。現在は、副作用が少なく、クロミプラミンと同等の効果を有するSSRIによる治療が中心です。焦らず服用することが大切です。服薬中止による再発率は高いため、少なくとも1年以上は薬物療法を継続する必要があると考えます。心理療法の中で、治療効果が最も高いと考えられているのが行動療法です。その代表的なものとして、暴露・反応妨害法があります。強迫観念を誘発する刺激になれるということを、患者様に実際に体験してもらい、強迫行為の必要性を低下させることを目的としています。強迫観念を誘発する刺激を、誘発する程度の軽いものから段階的に体験していただき徐々になれてもらうというものです。この治療法は薬物療法と同等の効果を有しており、患者様ご自身が治療者でもあるため効果はより持続的と考えられています。ただし、この治療には患者様の高いモチベーションと治療者との信頼関係が必要となります。